多分獣道が出来る経緯はこんな感じではないかと思う。
その道は、特に除雪される事も無く冬になると雪に埋もれてなくなってしまったり、雪が降るまでは物理的に通り抜けられなかった所が雪に橋渡しされるような場所に出来る。
まず、『あの道が無ければどうにも不便だ。』とか、『あそこが通れるようになれば便利なのに。』と思っている一人のチャレンジャーが、どんなに雪にぬかるんでも、ここを通ってみせるという心意気と共に足跡を残して進む。その足跡を見て2番手、3番手が、誰かがこの道を通りきったのならば自分も先に進めるはずと後に続く。こうしてその日の雪の降り具合やどのくらいの間隔で後続が来るかという事にも大きく左右されるものの、10人目くらいともなると人一人がやっと通れるくらいの幅でしっかりと踏み固められた獣道が出来上がる。
つまりこの獣道とはヒト科の動物により出来るのである。

人一人がやっと通れる幅なので、当然向こうから来た人とこっちから来た人とがすれ違う事はできない。
そこで、向こうから人が来たなと思ったらぬかるみ覚悟でこの道の傍らへ一旦避ける。(“さける”じゃなくてよ。“よける”と読んでちょうだいよ。)どちらが避けるかはその時の間合いというか呼吸というかで何となく決まるのである。
傍若無人な者であれば、自分が避けずにどこまで行けるか秘かにチャレンジしていたりするかもしれない。片方の人が雪のぬかるみに足を突っ込むには少々辛かろうというオシャレ靴なんかを履いていて、もう一方は長靴なのに道を譲りそうに無いとなると、その人は無粋な人だと判断せざるを得ない。
等々、小さなコミュニケーションが発生する場所。それが獣道である。
私はその道をレモンと歩くのが好きである。
大抵は私が避ける。レモンとのお散歩仕様の長靴なので避けるのに何の支障もない。もとよりレモンはぬかるみに突っ込んでいくのが大好きなのだし、“人とすれ違う時は静かに待て”の練習にもなるのでさっさと避ける。
するとあるお爺さんはすれ違う時、「あらら~、こっちが避けようと思ったのに~。ありがとね~。」と言う。あるおばさんは、私達が避けて待機してるのを確認した途端「すみませ~ん。ありがとう~。」と私達を長く待たせまいとして大急ぎで小走りですれ違っていく。
この前珍しく、先に避けられてしまった。
これ、かなり珍しいパターンである。何故なら私達はいつもかなり早めに避けるのだ。その私達よりも先に避けるなんて、そうとうの避け上手と見た。避けられ慣れてない私はすっかり恐縮して小走りで「ありがとうございま~す。」パターンで行ったのだが、相手はさすがに更に上手。「急がなくてもいいですよ~


出来る!出来るわこの人達!!(相手は2人連れだった。)
まだまだ気持ちの良いコミュニケーションが出来る世の中である事を再認識できる、獣道とはそんな場所である。
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